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OGATA Tetsuji の数学ブログ

数学科卒の30代ウェブプログラマーが書く数学ブログ Powered by MathJax

素数が無限個あることと調和級数が発散すること

解析学 整数論

こんにちは、おがたです。

あ、そうそう、今までのブログ記事もそうですが、今のところ特に文献を取り出して書いているわけでも、ウェブを検索した結果をことさら引用しているわけでもなく、私の知識と記憶を主に使って書いています。ゆえに、説明や証明には間違いや認識不足があるかもしれないことをご了承ください。厳密な証明には遠く及んでいないと感じます。よく言えば牧歌的な解説。このブログは現状、論文でも証明サイトでも宿題支援サイトでもないので、多少昔の牧歌的な展開で進めることで、概念的な理解のほうを優先させたいと考えてのことです。ただし、省略したものの現代数学に置いて注意すべき点は、私のカバーできる範囲で指摘するつもりです。

今回は、まず素数が無限個あることを証明したいと思います。

簡単な証明法は背理法を習った中学生なら可能です。もし素数が有限であれば矛盾が起こることを利用すればよいわけです。

素数が有限個、例えば$n$個しかないと仮定した場合、以下のように素数を書き下せる。

\[ \{p_1, p_2, p_3, \dots ,p_{n-1}, p_n \} \]

ここで $p_1 = 2, p_2 = 3, \dots$ である。

このとき以下のような数 $p'$ を考える。

\[ p' = \prod_{k=1}^n p_k + 1 = p_1 p_2 p_3 \cdots p_{n-1} p_n + 1\]

($\prod$ は乗積記号。総和記号 $\sum$ の掛け算版だと思えばよい)

この数 $p'$ は最大の素数 $p_n$ よりも大きい。仮定より $p'$ は合成数なので、$p_1$ から $p_n$ までの何れかの素数で割ることができるはずである。それを $1 \leq m \leq n$ を満たすとある $m{}$ について $p_{m}$ だとすると

\[ \frac{p'}{p_m} = \frac{1}{p_m}\prod_{k=1}^n p_k + \frac{1}{p_m} \]

ここで仮定より左辺は整数、右辺の乗積項は整数。だが、$1/p_{m}$ は $p_m \leq 2$ により整数ではない。これは矛盾。素数が有限個であるという仮定は背理法により否定される。ゆえに、素数は無限個存在する■

今回は市販の参考書より多分クドいくらいの説明をしたが、このようにして素数は有限個ではなく無限個であることは簡単に証明可能。

ただ、この世の中には「素数が無限個存在する」という証明は、それこそ「三平方の定理」の証明等の初等的な定理同様、無数の証明方法が存在するらしい。

この中でも、少し興味深い証明をしたい。

以下の無限級数調和級数という。

\[ H = \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n} \]

ここでは便宜上、$H$ と置かせてもらったが、一つの事実として、この調和級数は発散する。つまり

\[ H_N = \sum_{n=1}^N \frac{1}{n} \]

は $N$ を大きくすればいくらでも大きくなる。どんな正の実数 $M{}$ に対しても $H_N > M{}$ となるような自然数 $N$ が存在するということである。

これの証明も高校数学の中で証明が可能。

\[ H = 1 + \frac{1}{2} + \frac{1}{3} + \frac{1}{4} + \cdots \]

であるが、これを以下のようにグループ分けする

\[ H = 1 + \left(\frac{1}{2}\right) + \left(\frac{1}{3} + \frac{1}{4}\right) + \left(\frac{1}{5} + \frac{1}{6} + \frac{1}{7} + \frac{1}{8}\right) + \left(\frac{1}{9} + \cdots + \frac{1}{16}\right) + \cdots \]

丸括弧のグルーピングの個数は、$2$ のべき乗の数で増えていく。

丸括弧でグルーピングされた部分それぞれ、最も右辺の値のほうが小さい(分子が$1$で、最も分母が大きいのだから)ので、他の項もそれで置き換えれば式全体は小さくなるはずである。実際にそうすれば

\[ H > 1 + \frac{1}{2} + \left(\frac{1}{4} + \frac{1}{4}\right) + \left(\frac{1}{8} + \frac{1}{8} + \frac{1}{8} + \frac{1}{8}\right) + \left(\frac{1}{16} + \cdots + \frac{1}{16}\right) + \cdots \]

となり

\[ H > 1 + \frac{1}{2} + \frac{1}{2} + \frac{1}{2} + \frac{1}{2} + \cdots \]

となる。右辺の級数が発散することは明らかなので、$H$ も発散する■

このようにして調和級数 $H$ が発散することが分かった。

ここまでは序章。

18世紀の天才数学者、レオンハルトオイラーは以下のような数式展開を行った。

先ほどのように $p_n$ を $n$ 番目の素数とするとき、ある整数 $N$ に対して

\[ P_N = \prod_{n=1}^N \frac{1}{1-\frac{1}{p_n}} \]

という値を考える。まずは乗積項となっている

\[ \frac{1}{1 - \frac{1}{p_n}} \]

部分を見ると、これは等比級数の和公式になっている。つまり、

\[ \frac{1}{1 - \frac{1}{p_n}} = \sum_{k=1}^\infty \left(\frac{1}{p_n}\right)^k \]

添字のアルファベットがややこしい(私の選び方が下手かも)なのに注意。

先ほどの乗積値 $P_N$ は、これを $N$ 番目の素数まで掛けあわせていることになる。愚直に書けば

\[ P_N = \left(\frac{1}{2^0}+\frac{1}{2^1}+\frac{1}{2^2}+\cdots\right)  \left(\frac{1}{3^0}+\frac{1}{3^1}+\frac{1}{3^2}+\cdots\right)  \left(\frac{1}{5^0}+\frac{1}{5^1}+\frac{1}{5^2}+\cdots\right)   \cdots  \left(\frac{1}{p_N^0}+\frac{1}{p_N^1}+\frac{1}{p_N^2}+\cdots\right)\]

となる。整数の$0$乗は$1$であることに注意すれば、$1$と、$2$から$p_N$までの素数を最大$N$個掛けあわてできる任意の自然数 $x$ を分母に持つ $1/x$ という数がちょうど$1$個ずつ出現することになる。$1/x$ という項が $2$ 個以上無いことは、素因数分解の一意性により言える。

この考察により $P_N$ を $N \to \infty$ の極限を取ると、調和級数になることが分かる。略記であるが分かりやすく書けば

\[ H = \lim_{N \to \infty} P_N \]

である。通常の実解析学では、$\infty$ と等しいであるとか、$H = \infty$ であるといった表現は曖昧なので、既に表現としてしか役割を持たず、正の無限大 $+\infty$ へ発散することが分かっている $H$ と上述の極限値を等号で結ぶのはよろしい表現とは言えない。あくまで牧歌的な数式展開と捉えてほしい(言い訳)。

ここで整理すると、調和級数と同等であることが分かった

\[ \lim_{N \to \infty} P_N \]

は正の無限大へ発散する。少なくとも、$n$ (これは素数の付番でもあった) で決まる有限の値

\[ \frac{1}{1-\frac{1}{p_n}} \]

を高々有限個掛け算したところで有限の値であることは明らかである。つまり、少なくとも素数は無限個である必要がある。よって、調和級数が正の無限大へ発散することにより、素数が無限個あることが証明できた■

調和級数 $H$ は発散するが、例えばこれの各項を $2$ 乗した

\[ \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^2} \]

は収束する。一般に $s>1$ に対して

\[ \zeta(s) = \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^s} \]

は収束して、特に $s$ が偶数の場合にはその値はよく知られている。この関数をリーマンのゼータ関数、または単にゼータ関数と呼ぶ。調和級数は $\zeta(1)$ の場合であり、上述の $2$ の場合

\[ \zeta(2) = \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^2} = \frac{\pi^2}{6} \]

という値を持つ。

ゼータ関数は無限級数(無限和)の公式であったが、上述の素因数分解の一意性を利用したオイラーの議論から $s \geq 1$ において

\[ \zeta(s) = \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^s} = \prod_{n=1}^\infty \frac{1}{1-\frac{1}{p_n^s}} \]

という等式で無限乗積(無限積)と結ばれる。

この考察からすぐに、ゼータ関数素数と深い関わりがあることが推測され、実際に素数の研究に非常に密接に関わっている。

ここでは多くは触れないが、世界中の数学者によってゼータ関数に関する研究は今も活発に進められているほど、現代数学整数論の中でも重要なテーマとなっており、リーマンがゼータ関数の値について予想したリーマン予想は数学界の最も重要な問題の一つとされ、懸賞問題にもなっている。

様々な興味をひくゼータ関数だが、気が向いたらこのブログでも既知の事実を議論展開してみたい。