OGATA Tetsuji の数学ブログ

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素数が無限個あることと調和級数が発散すること

こんにちは、おがたです。

あ、そうそう、今までのブログ記事もそうですが、今のところ特に文献を取り出して書いているわけでも、ウェブを検索した結果をことさら引用しているわけでもなく、私の知識と記憶を主に使って書いています。ゆえに、説明や証明には間違いや認識不足があるかもしれないことをご了承ください。厳密な証明には遠く及んでいないと感じます。よく言えば牧歌的な解説。このブログは現状、論文でも証明サイトでも宿題支援サイトでもないので、多少昔の牧歌的な展開で進めることで、概念的な理解のほうを優先させたいと考えてのことです。ただし、省略したものの現代数学に置いて注意すべき点は、私のカバーできる範囲で指摘するつもりです。

今回は、まず素数が無限個あることを証明したいと思います。

簡単な証明法は背理法を習った中学生なら可能です。もし素数が有限であれば矛盾が起こることを利用すればよいわけです。

素数が有限個、例えば$n$個しかないと仮定した場合、以下のように素数を書き下せる。

\[ \{p_1, p_2, p_3, \dots ,p_{n-1}, p_n \} \]

ここで $p_1 = 2, p_2 = 3, \dots$ である。

このとき以下のような数 $p'$ を考える。

\[ p' = \prod_{k=1}^n p_k + 1 = p_1 p_2 p_3 \cdots p_{n-1} p_n + 1\]

($\prod$ は乗積記号。総和記号 $\sum$ の掛け算版だと思えばよい)

この数 $p'$ は最大の素数 $p_n$ よりも大きい。仮定より $p'$ は合成数なので、$p_1$ から $p_n$ までの何れかの素数で割ることができるはずである。それを $1 \leq m \leq n$ を満たすとある $m{}$ について $p_{m}$ だとすると

\[ \frac{p'}{p_m} = \frac{1}{p_m}\prod_{k=1}^n p_k + \frac{1}{p_m} \]

ここで仮定より左辺は整数、右辺の乗積項は整数。だが、$1/p_{m}$ は $p_m \leq 2$ により整数ではない。これは矛盾。素数が有限個であるという仮定は背理法により否定される。ゆえに、素数は無限個存在する■

今回は市販の参考書より多分クドいくらいの説明をしたが、このようにして素数は有限個ではなく無限個であることは簡単に証明可能。

ただ、この世の中には「素数が無限個存在する」という証明は、それこそ「三平方の定理」の証明等の初等的な定理同様、無数の証明方法が存在するらしい。

この中でも、少し興味深い証明をしたい。

以下の無限級数調和級数という。

\[ H = \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n} \]

ここでは便宜上、$H$ と置かせてもらったが、一つの事実として、この調和級数は発散する。つまり

\[ H_N = \sum_{n=1}^N \frac{1}{n} \]

は $N$ を大きくすればいくらでも大きくなる。どんな正の実数 $M{}$ に対しても $H_N > M{}$ となるような自然数 $N$ が存在するということである。

これの証明も高校数学の中で証明が可能。

\[ H = 1 + \frac{1}{2} + \frac{1}{3} + \frac{1}{4} + \cdots \]

であるが、これを以下のようにグループ分けする

\[ H = 1 + \left(\frac{1}{2}\right) + \left(\frac{1}{3} + \frac{1}{4}\right) + \left(\frac{1}{5} + \frac{1}{6} + \frac{1}{7} + \frac{1}{8}\right) + \left(\frac{1}{9} + \cdots + \frac{1}{16}\right) + \cdots \]

丸括弧のグルーピングの個数は、$2$ のべき乗の数で増えていく。

丸括弧でグルーピングされた部分それぞれ、最も右辺の値のほうが小さい(分子が$1$で、最も分母が大きいのだから)ので、他の項もそれで置き換えれば式全体は小さくなるはずである。実際にそうすれば

\[ H > 1 + \frac{1}{2} + \left(\frac{1}{4} + \frac{1}{4}\right) + \left(\frac{1}{8} + \frac{1}{8} + \frac{1}{8} + \frac{1}{8}\right) + \left(\frac{1}{16} + \cdots + \frac{1}{16}\right) + \cdots \]

となり

\[ H > 1 + \frac{1}{2} + \frac{1}{2} + \frac{1}{2} + \frac{1}{2} + \cdots \]

となる。右辺の級数が発散することは明らかなので、$H$ も発散する■

このようにして調和級数 $H$ が発散することが分かった。

ここまでは序章。

18世紀の天才数学者、レオンハルトオイラーは以下のような数式展開を行った。

先ほどのように $p_n$ を $n$ 番目の素数とするとき、ある整数 $N$ に対して

\[ P_N = \prod_{n=1}^N \frac{1}{1-\frac{1}{p_n}} \]

という値を考える。まずは乗積項となっている

\[ \frac{1}{1 - \frac{1}{p_n}} \]

部分を見ると、これは等比級数の和公式になっている。つまり、

\[ \frac{1}{1 - \frac{1}{p_n}} = \sum_{k=1}^\infty \left(\frac{1}{p_n}\right)^k \]

添字のアルファベットがややこしい(私の選び方が下手かも)なのに注意。

先ほどの乗積値 $P_N$ は、これを $N$ 番目の素数まで掛けあわせていることになる。愚直に書けば

\[ P_N = \left(\frac{1}{2^0}+\frac{1}{2^1}+\frac{1}{2^2}+\cdots\right)  \left(\frac{1}{3^0}+\frac{1}{3^1}+\frac{1}{3^2}+\cdots\right)  \left(\frac{1}{5^0}+\frac{1}{5^1}+\frac{1}{5^2}+\cdots\right)   \cdots  \left(\frac{1}{p_N^0}+\frac{1}{p_N^1}+\frac{1}{p_N^2}+\cdots\right)\]

となる。整数の$0$乗は$1$であることに注意すれば、$1$と、$2$から$p_N$までの素数を最大$N$個掛けあわてできる任意の自然数 $x$ を分母に持つ $1/x$ という数がちょうど$1$個ずつ出現することになる。$1/x$ という項が $2$ 個以上無いことは、素因数分解の一意性により言える。

この考察により $P_N$ を $N \to \infty$ の極限を取ると、調和級数になることが分かる。略記であるが分かりやすく書けば

\[ H = \lim_{N \to \infty} P_N \]

である。通常の実解析学では、$\infty$ と等しいであるとか、$H = \infty$ であるといった表現は曖昧なので、既に表現としてしか役割を持たず、正の無限大 $+\infty$ へ発散することが分かっている $H$ と上述の極限値を等号で結ぶのはよろしい表現とは言えない。あくまで牧歌的な数式展開と捉えてほしい(言い訳)。

ここで整理すると、調和級数と同等であることが分かった

\[ \lim_{N \to \infty} P_N \]

は正の無限大へ発散する。少なくとも、$n$ (これは素数の付番でもあった) で決まる有限の値

\[ \frac{1}{1-\frac{1}{p_n}} \]

を高々有限個掛け算したところで有限の値であることは明らかである。つまり、少なくとも素数は無限個である必要がある。よって、調和級数が正の無限大へ発散することにより、素数が無限個あることが証明できた■

調和級数 $H$ は発散するが、例えばこれの各項を $2$ 乗した

\[ \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^2} \]

は収束する。一般に $s>1$ に対して

\[ \zeta(s) = \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^s} \]

は収束して、特に $s$ が偶数の場合にはその値はよく知られている。この関数をリーマンのゼータ関数、または単にゼータ関数と呼ぶ。調和級数は $\zeta(1)$ の場合であり、上述の $2$ の場合

\[ \zeta(2) = \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^2} = \frac{\pi^2}{6} \]

という値を持つ。

ゼータ関数は無限級数(無限和)の公式であったが、上述の素因数分解の一意性を利用したオイラーの議論から $s \geq 1$ において

\[ \zeta(s) = \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^s} = \prod_{n=1}^\infty \frac{1}{1-\frac{1}{p_n^s}} \]

という等式で無限乗積(無限積)と結ばれる。

この考察からすぐに、ゼータ関数素数と深い関わりがあることが推測され、実際に素数の研究に非常に密接に関わっている。

ここでは多くは触れないが、世界中の数学者によってゼータ関数に関する研究は今も活発に進められているほど、現代数学整数論の中でも重要なテーマとなっており、リーマンがゼータ関数の値について予想したリーマン予想は数学界の最も重要な問題の一つとされ、懸賞問題にもなっている。

様々な興味をひくゼータ関数だが、気が向いたらこのブログでも既知の事実を議論展開してみたい。

無限べき乗塔へのいざない

無限べき乗塔(Power Tower)とは以下のように定義される関数です。

\[h(z)=z^{z^{z^{z^\cdots}}}\]

より厳密に言えば

\[h_1(z)=z,  h_n(z)=z^{h_{n-1}(z)},  n \geq 1\]

と定義された関数列 $h_n(z)$ の極限 $h(z)$

\[h(z)=\lim_{n \to \infty}h_n(z)\]

のこと。$z$ の定義域を明示していませんが、ここではそれの一端を確定させていきます。$z=1$ の場合、$h(1)=1$ は自明。

簡単な例として、$h(\sqrt{2})$は2となる、つまり数列$\{h_n(\sqrt{2})\}_{n \in \mathbb{N}}$は2に収束する。このことは中等数学の範囲で証明可能。

略記として、$a_n=h_n\left(\sqrt{2}\right)$と置こう。漸化式は $a_n=\sqrt{2}^{a_{n-1}}$ となる。

また $a_n$ は

\[a_n = \sqrt{2}^{a_{n-1}} = \sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\cdots^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}}}}} < \sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\cdots^{\sqrt{2}^2}}} = 2\]

である。$n$階層のべき乗塔の一番上の$\sqrt{2}$を2に置き換えた右辺は左辺より大きいこと、$\sqrt{2}^2=2$の連鎖が続いて最終的に2になることに注意しよう。

さらに $a_{n-1} \leq a_n$であることも分かる。つまり数列 $\{a_n\}_{n \in \mathbb{N}}$ は有界な単調増加数列である。有界な単調増加数列は収束値を持つという事実から、この数列は収束値を持つ。この収束値を $a$ とすれば、漸化式の両辺を $n \to \infty$ の極限を取ることによって以下の方程式を得る。

\[a=\sqrt{2}^a\]

この実数解は $y=x-\sqrt{2}^x$ のグラフを考察することによって $a=2$ または $a=4$ であることが分かるが、$a_n<2$ より$a=2$ が支持される。よって

\[h(\sqrt{2})=\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^\cdots}}=2\]

であることが証明できた。

この無限べき乗塔の$z=\sqrt{2}$の場合、

\[\sqrt{2}=2^{\frac{1}{2}}\]

であるという特徴を使うことで証明できた。$\sqrt{2} \fallingdotseq 1.4142135\cdots$ であるが、$\sqrt{2}$ よりも多少大きな数$z$でも無限べき乗塔が収束することは数値計算で類推できる。前述の有界性の証明の時に用いた論法を使うのであれば

\[z=x^\frac{1}{x}\]

を考察すれば良いことになる。$x=3$ の場合、$z=3^{\frac{1}{3}} \fallingdotseq  1.4422495703074\cdots$ という値を持つが、この数値で無限べき乗塔の数値計算をしても収束することとなる。ただし収束値は3ではないことに注意。3が上界の単調増加数列で収束値を持つことは前述と同様の議論で導けるが、収束値は3ではない(計算の詳細は割愛するが、収束値の概算は$h(3^{1/3}) \fallingdotseq 2.47805268\cdots$)。

計算をしてみると

\[y=x^\frac{1}{x}\]

は、$x$ が $e$ の時、極大値 $e^{1/e} \fallingdotseq 1.4446678610097\cdots$ を持つことが分かる。これも上述と同様の論法で収束することが証明でき、数値計算でも収束の様子を確認することができる。また、この値よりも少しでも大きな値を数値計算で確認すると発散することが数値計算で類推される。この場合は、$z=\sqrt{2}$ の場合と同様の論法で $h(e^{1/e})=e$ であることが分かる。

$h(z)$ を振り返ると

\[h(1)=1, (z=x^{1/x}, x=1)\]

は自明であり、$1 \leq z \leq e^{1/e}$ の場合、無限べき乗塔は収束値を持つことが分かった。

ただ、$z > e^{1/e}$ の場合の厳密な発散性、そして $z < 1$ の場合の考察はまだしていない。$z < 1$ の場合の考察も面白い結果をもたらしてくれるが、それはまた次回、またはここまで記事を読んでくださった方へのプレゼント問題としたい。

私は無限べき乗塔の高度な性質を知らないが、解析接続の手法を使うことで、ほとんどいたるところ $z \in \mathbb{C}$ において $h(z)$ を拡張することができるだろう。

二次方程式の解の公式と代数的なお話

二次方程式

\[ax^2+bx+c=0, a \neq 0\]

の解$x$は実数係数$a,b,c$を使って以下のように書ける。これを二次方程式の解の公式という。

\[x=\frac{-b\pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a}\]

この時、$D=b^2-4ac$と置いた場合、xが実数解のみ持つことを仮定する場合、$D>0$の場合解は2つ、$D=0$の場合解は1つ、$D<0$の場合解を持たないことになる。この$D$を判別式と呼ぶ。

解として複素数を認める場合、二次方程式は必ず重複度を含めて2個の解を持つ。また同様に定義された$n$次方程式(代数方程式)は必ず重複度を込めて$n$個の解を持つ。これを代数学の基本定理と呼ぶ。

解の重複度とは、方程式の左辺を一次の式で因数分解した際に、同じ項が複数出てくることである、例えば以下の場合、左辺は $(x+1)^2$ と因数分解されるので $x=-1$ が二重解となっている。

\[ x^2 +2x + 1= 0\]

上述の二次方程式は、実係数 $a,b,c$ の場合にも複素数解を持つことになるが、$a,b,c$を複素係数にしても、$x$が複素数よりもさらに広い数体系を要求することはなく、代数学の基本定理が同様に成り立つ。このような複素数、および複素数に加法と乗法の演算を定義した複素数体上での上述のような性質複素数代数的閉体であるという。

代数学の基本定理代数的閉体性質は、複素数と複素係数の代数方程式の特徴的な性質である。ただ、その証明は中等数学の範囲では容易ではなく、簡便な証明方法は高等数学での解析学的手法に頼ることになるところが面白いところと言える。具体的には任意の複素係数$n$次多項式

\[f(z)=\sum_{k=0}^n a_k z^k, (a_n \in \mathbb{C},  \forall n \in \mathbb{N})\]

において1次の因数分解

\[f(z)=(z-\alpha)g(z)\]

が出来ればよい(そうすれば複素係数$n-1$次多項式$g(z)$も帰納的に因数分解ができて$f(z)=c \sum_{k=0}^n (z-\alpha_k), (\exists c \in \mathbb{C})$ の形で表せる)ことになるが、この証明を簡便に済ませるためには、複素解析学のリウヴィルの定理や、それよりも強いピカールの定理を動員する必要がある。代数学の基本定理の証明に解析学性質(この場合、実際は複素数に通常の絶対値としての距離(ノルム)を導入した時の集合論としてのコンパクト性によるもの)を使うというのも面白い。

高校生が「なんで虚数なんて『ウソの数』なんて作る必要があるんだ」とブーたれるほのぼのとしたケースはよく見られるが、代数的には虚数単位$i$さえ導入すれば、今まで代数方程式を解くために、自然数、ゼロ、負の数、有理数無理数、実数と散々広げてきた数の体系をこれ以上広げなくても良い(複素数代数的閉体のとしての性質)という点が重要かつ深淵なのです。それ以上に、複素数が自然界の計算を理路整然と語り、現代科学を支える部分は非常に多岐に渡ります。

放物線からはじめてみる

$y=x^2$

はてなブログMathJaxを導入してみるテスト。はてなブログ一周年記念。はてなブログ1周年おめでとう! id:hatenablog

MathJax の設定次第だけど、y=x^2 ってドル記号ではさんで書くと $y=x^2$ になるよ!フォントが綺麗!ブラウザやOSなどの環境にもよるだろうけど。

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